下村連さん(中2)翻訳のトインビー『歴史の研究』、母校へ寄贈される

6月2日(水)伊那薫ヶ丘会館においてトインビーの『歴史の研究』全25巻が創立100周年記念事業の一環として学校へ寄贈されました。この本の翻訳に9年間携わったのは、伊那中学校2回生の下島連(むらじ)さんです。親族の下島大輔さんと吉澤康道さんより酒井茂記念事業実行委員長と埋橋浩校長へ手渡されました。下島連さんは明治41年駒ヶ根市中沢の生まれ。松本高等学校から京都大学文学部を卒業。松高時代は、後に養父となる東京田端の下島勲(空谷)宅に足繁く通い、芥川龍之介から知遇を得ました。文藝春秋社勤務を経て戦後翻訳者として活躍、『釣魚大全』などの翻訳に力を入れました。昭和30年から16年間アメリカ大使館に勤務して、広報誌『アメリカーナ』の編集長を務めます。46年から亜細亜大学教授に就任。数ある翻訳の中でも特筆されるのが、「電力の鬼」と言われた松永安左衛門に依頼されて取り組んだ『歴史の研究』です。1万ページに及ぶ日本語訳と7千ページに亘る英文とを丹念に照合し、47年9月に全巻の完訳が成りました。この出版に対して第8回毎日出版文化賞が贈られました。この大事業を成し遂げた礎は、伊那中学校開校当時の優れた英語教育にあります。それまで上伊那地域に旧制中学校がなかったために遅れていた英語教育を挽回しようと、優れた英語教師を集め、週5時間を英語にあて、さらに全員に英英辞典を持たせて読解力が養われました。その結果、日本の英語界を代表する錚々たる人物を輩出しました。下島連さんについては、『百年史』でも取り上げられています。